ポスター発表概要


50音順、敬称略
1. Amplification of gravitation via weak measurement
上田 大輝 総合研究大学院大学
本研究ではweak value amplificationをBose-Einstein凝縮(BEC)を起こした原子雲に適応することで、原子雲が急激に重力源の質量に引きつけられうることを示す。本研究ではBECの重心座標系と相対座標系からなる系を間接測定系とみなし弱測定を適応する。BECの重心系における始状態としてガウス分布を仮定することで、二つの系の相互作用の結合定数の無限次まで効果を評価し、原子雲が古典的な運動の10^3倍の速さで重力源の質量に引きつけられうることを示す。
2. 時間反転法を用いた位置-波数もつれ光子対が示す量子干渉の古典光学的観測およびその光イメージングへの応用可能性
小川 和久 北海道大学
量子もつれ光子対が持つ位置-波数もつれの性質は様々な量子光学現象の基礎となっている. 一方時間反転法を用いると, 量子もつれ光子対を用いた光学系が示す 2 光子検出パターンを古典光学的に再現することができる. 本発表では, 時間反転法を位置-波数もつれ光子対が示す量子干渉に適用し, 回折限界を超える集光ビームスポットの 2 光子検出パターンを古典光学的に再現した実験について報告する. さらに光イメージングでの分解能向上の可能性を議論する.
3. A refinement of quantum mechanics by algorithmic randomness and its application to the BB84 QKD protocol
只木 孝太郎 中部大学
The notion of probability plays a crucial role in quantum mechanics. It appears in quantum mechanics as the Born rule. In modern mathematics which describes quantum mechanics, however, probability theory means nothing other than measure theory, and therefore any operational characterization of the notion of probability is still missing in quantum mechanics. In our former works, based on the toolkit of algorithmic randomness, we presented an alternative rule to the Born rule, called the principle of typicality, for specifying the property of results of quantum measurements in an operational way. We did this from the point of view of the many-worlds interpretation of quantum mechanics. In this presentation, we make an application of our framework to the BB84 quantum key distribution protocol in order to demonstrate how properly our framework works in practical problems in quantum mechanics, based on the principle of typicality.
4. ボーズ粒子系を基底状態から準位反転させる断熱サイクル:新奇な量子ホロノミーの一例として
田中 篤司 首都大学
新奇な量子ホロノミーとは、断熱サイクルが定常状態にある量子系を別の定常状態に移すことである。その具体例については、自由度の小さな系や、多体系の可解模型での報告があるが、ここでは、相互作用のある量子多体系の近似的な扱いでも新奇な量子ホロノミーが起きる例を報告する。この結果の一部は全卓樹氏と中村孝明氏(高知工科大)との共同研究によるものである。 Ref. [1] 田中篤司、全卓樹、日本物理学会誌 72, 240(2017年4月号). [2] Tanaka and Cheon, New J. Phys. 18, 045023 (2016).
5. 量子ビットで探るBlack holeのFirewall問題
徳住 友稜 名古屋大学
曲がった時空上の量子場を調べると、Black Hole(BH)は自発的にentanglementをもつ一対の粒子を生成することが1975年にHawkingによって指摘された。一方は、熱的粒子として外部に放射される。この放射粒子はHawking粒子と呼ばれる。もう一方は、BH内部に落ち、horizonを縮めて、BHを蒸発させていく。BH蒸発過程の理論的整合性を問う問題はBH情報問題と呼ばれ、未だ明らかにされていない。ここで、蒸発過程を3つの系、BH、Hawking放射(JR)、それ以前に放射されたHawking粒子(ER)に分ける。この3体間のentanglement構造を調べると、蒸発過程は量子論と整合的でないことが2012年にAlmheiri-Marolf-Polchinski-Sully(AMPS)らによって示された。この問題を解決するために、BHとJR間のentanglementを禁止する壁(Firewall)の存在が提案された。しかし、自由落下する観測者もFirewallを感じるため、等価原理が破れていることになる。このFirewall問題は、基本法則に関わる重要な問題として注目されている。  本研究は、BHの蒸発過程における多体間entanglementの時間発展を、さらに詳しく調べることで、Firewall問題の解決をはかる。一般に、量子場の理論では、多体間entanglementの評価は困難である。そこで今回、量子gateを用いて、BH蒸発過程を再現するような一種のqubit modelを提案する。そして、entanglement entropy、mutual information、negativityなどの量を解析し、BH情報過程のentanglement構造を調べることで、Firewallの必要性を再議論したい。  結果として、提案するmodelではFirewallの必要性はBHの質量とHawking放射の振動数に依ることがわかった。振動数が小さい(小質量、低振動数mode)場合はBHとJRの間のentanglementが切れるというFirewall的なふるまいをみせる。一方、振動数が大きい(大質量、高振動数mode)場合はentanglementは切れない。すなわち、Firewall的でないふるまいを見せることが分かった。  
6. リング上の非線形シュレディンガー方程式のスペクトル構造
中村 孝明 高知工科大学
非線形シュレディンガー方程式(NonLinear Schrödinger equation)はその非線形性により解析が困難である。グロス=ピタエフスキー方程式は非線形方程式であるが可積分系であり、δ型相互作用する希薄な多体ボソン系や光ソリトンなどを記述する。今回、欠陥のあるリング上におけるグロス=ピタエフスキー方程式の固有値を数値計算した。点欠陥の接続条件として、Fölöp-Tsutsui δ型 (ψ+=tψ-、 tψ’+-ψ-=vψ-)を選んだ。固有値の準位は3種類に分類でき、線形の方程式と同様に準位の交差、反発、ベリー位相、アンホロノミーが観察された。線形にはみられない準位の消失、分岐も観察されたが、Phase portraitを調べることにより準位の消失は固有関数の変化、分岐は固定点からの湧き出しであると理解できた。また、得られた固有値の安定性をソボレフ空間H2上での一次摂動論、作用汎関数解析により安定であることを示した。欠陥のある開放系でのNLSのground stateの存在とその安定性についても作用汎関数解析で議論し、解が存在するパラメータの範囲と安定性を示した。断熱過程における準位反転も線形の場合と同様にグロス=ピタエフスキー方程式で確認した。
7. 量子断熱過程における波動関数の行列積表示とその時間発展
橋爪 洋一郎 東京理科大学
量子断熱過程における量子効果の時間発展を行列積表示によって解析した.特に,波動関数の行列積表示の各成分の時間発展を詳細に検討した.
8. TBA
花城 将悟 総合研究大学院大学
TBA
9. 一般確率論の圏
松久 勝彦 東京大学/KEK
量子力学を一般化された確率論的/情報理論的観点から捉える試みがこれまで幾つかなされているが、その数学的詳細や公理は流儀によって微妙な幅がある。 近年B.Jacobsらによって、KadisonDualityが、 適切に位相づけされたEffectModule/ConvexSpaceの圏同値(随伴)として再定式化された。 この構造は一般確率論を展開するのに極めて適切かつ自然な構造と動機を備えている。 そこで本ポスターでは、この圏同値(随伴)の観点から一般確率論の語法をなぞることによって、 各種確率論的概念の、より汎用な位置づけを観察する。
10. 局所フィルタリング操作を応用した非局所相関の検出
松村 央 名古屋大学
量子もつれは量子力学で現れる非局所相関であり、その性質を特徴づける重要な不等式としてBellの不等式が知られている。ある状態がBellの不等式を破っているとき、その状態は量子的にもつれている。しかしながらその逆は正しくなく、一般にBellの不等式を破らない量子もつれ状態が存在する。そのような状態の中には、局所フィルタリングと呼ばれる局所的な測定過程によって、Bellの破れを引き起こすものが存在する。 本発表では、二つのスピン系を用いた場の持っているエンタングルメントを検出する問題を考える。そして検出器に局所フィルター操作を作用させることでBellの破れを最大にし、検出器によって明らかにできる量子的な非局所性について議論する。
11. 一般化確率論における複合系と非局所的な状態
松本 啓史 国立情報学研究所
量子論や古典論を含む一般化確率論は観測や状態についての最低限の公理しか要請しない。    それゆえ、与えられた系から複合系を合成する仕方は一通りでなく、また、それゆえに非局所性の    現れ方も様々である。本発表では、その状況を通信理論的視点から整理する。
12. 弱測定を用いた量子トモグラフィーのノイズ耐性
宮﨑 哲也 大阪大学
量子トモグラフィーとは未知の量子状態の波動関数や密度行列を実験的に推定する手法のことである。量子トモグラフィーは量子情報工学の実験において思い通りの量子状態や量子回路を作れたかどうかのテストをする際などに実験室で広く用いられており、量子情報を産業化するときに必須となる技術のひとつである。しかし現在主流の手法はノイズに弱いとされており、ノイズに強い量子トモグラフィーについて研究が続けられている。そして近年、量子トモグラフィーのノイズに弱いという弱点を補うために、ノイズ軽減効果が期待できる弱測定を用いた量子トモグラフィーについても提案がなされた。初期の方法では推定状態が必ずずれてしまうという弱点があったが[1]、その後より発展した方法がいくつか提案され、任意の測定の強さで可能でかつ推定状態のずれが無い量子トモグラフィーを行うことが可能になった[2]。しかしこの分野は研究途上にあり、どのような運用をするのが効果的かについて十分な議論がなされていない。本研究では、まず弱測定型の量子トモグラフィーがどれほどの精度で状態推定できるのかについてシミュレーションを行い、そして実験のパラメータを動かす、理論的に考察するなどして誤差が小さくなるような運用方法について模索した。その結果、弱測定の測定の強さが量子トモグラフィーの精度に及ぼす影響や、特定の条件下で先行研究[2]の弱測定型量子トモグラフィーより誤差が減る運用方法を得ることができた。 [1]Loernzo Maccone and Cosimo C. Rusconi, Phys. Lev. A 89 022122(2014) [2]Giuseppe Valonne and Daniel Dequal, Phys. Rev. Lett. 116 040502(2016)
13. 弱値増幅の性質
森 雄一朗 東京大学/KEK
弱値増幅が実際の測定においてもつ特性について、2014年に李・筒井が提案した測定誤差の観点での分析を2009年のDixonの実験に適用し、弱値増幅の特性および、李・筒井の方法自体の性質を分析し、今後の弱値増幅実験の設計において李・筒井の方法を応用する上で起こる問題等を検討した。
14. 量子論の背後にある圏論的双対性
森本 洋介 東京大学/KEK
量子論と関係する圏論的双対性を紹介する。1つ目は可換C*環の圏C*Algと コンパクトハウスドルフ空間の圏CompHausSpの双対性である。 この双対性は代数的量子論を展開する動機の1つとなる。 2つ目はBanach Effect Moduleの圏BEMとコンパクト凸集合の圏CCHの双対性であ る。これの双対性に基づいて操作的確率論を圏論的に捉えることができる。 
15. 負の弱値を用いた粒子損失の回避
横田 一広 大阪大学
プロジェクタの弱値が1の時、系は確率1でその固有状態にあるかのように振る舞う。例えば、粒子の経路状態を考え、ある経路の弱値が1だったとする。そして、その経路に粒子の状態を操作する素子を設置したとすると、粒子は確実に(確率1で)その操作を受ける。これに対して、弱値が-1の経路にも同じ素子を置くと、前述の操作は打ち消される。操作は、ユニタリーに限定されず、粒子損失のような不可逆的な操作でも成り立つ。この負の弱値による打消し操作は、従来の弱値発現に見られる「弱い」条件は必要としない。我々は、この弱値間での操作打消しを検証する実験を行ったので、その結果について発表したい。