ポスター発表概要


50音順、敬称略
1. 量子マスター方程式を用いた曲がった時空上での2体エンタングルメントの解析
久木田 真吾 Shingo KUKITA 名古屋大学
時空上の量子場のエンタングルメントを評価する方法として、場と相互作用する有限な内部自由度をもつparticle detectorを用いる方法がある。 本研究では、具体的にparticle detectorに対する量子マスター方程式をたてるという手法によって、エンタングルメントを評価することを試みた。 この際用いるマスター方程式はCoarse Graining Approximationによって導出されたものであり、回転波近似をとる場合では見ることのできないエンタングルメントに対する場の真空の揺らぎの寄与も検出可能である。 またマスター方程式を用いる手法の長所として、通常の摂動計算を用いる手法とは異なり、その時間発展を厳密に追えることがあげられる。この手法を用いて解析を行った結果、 マスター方程式に基づく発展の後に、エンタングルメントがある平衡状態に達する事を発見した。この平衡状態におけるエンタングルメントは、 摂動計算によって導かれる初期時刻近傍でのエンタングルメントとは異なる振る舞いを示す。本発表では、 特に量子場がMinkowski vacuum,Minkowski thermal state,de Sitter invariant vacuumの場合についてエンタングルメントを評価したので、 その初期時刻近傍、および平衡状態での振る舞いを議論する。
2. CHSH演算子の最大期待値とその状態依存性
鈴木 亜弥子 Ayako SUZUKI 早稲田大学
1984年、J.S.Bellによって、古典系においては暗黙のうちに仮定されていた局所実在論が量子力学では成り立たないことが示された。 この量子論における非局所実在性の理解の一環として、本研究では、Bell-CHSH不等式に基づいた非局所実在性の定量化を試みた。 これは、エンタングルメント測度とはまた異なった視点からの量子相関測度として考えられる。また一方で、CHSH不等式自体の測定値、測定の一般化、また物理量の拡張にも成功した。
3. Quantum Mechanics on Banach Spaces
竹内 建 Tatsu TAKEUCHI Virginia Polytechnic Institute and State Univ.
Banach spaces are normed vectors spaces which are natural extensions of Hilbert spaces. I will construct quantum-mechanics-like theories on Banach spaces and discuss what will differ from, or stay the same as, the canonical quantum mechanics on Hilbert spaces.
4. アルゴリズム的ランダムネスによる確率解釈の明確化と置き換え
只木 孝太郎 Kohtaro TADAKI 中央大学
量子力学では確率概念が本質的な役割を果たすが、量子力学を記述する今日の数学において、確率論とは測度論のことであり、確率概念の操作的特徴付けは見当たらない。 その意味で量子力学は物理理論としては不完全であると考えられる。本発表では、アルゴリズム的ランダムネスの概念装置に基づいて、通常の確率解釈(ボルン則)を操作主義的に明確化した代替規則を提示し、 量子力学の完全化を目指す。アルゴリズム的ランダムネスは数学の一分野であり、与えられた個別の無限二進列について、ランダムか否かの分類を可能にする理論体系である。 本発表では、このランダム性概念(Martin-Loefランダム性)を修正一般化した概念(ベルヌーイ測度に関するMartin-Loefランダム性)に基づいて、ボルン則の代替規則を与える。 ボルン則のこのような明確化の帰結として、量子力学全体を再構成する可能性についても言及したい。
5. 量子複雑系の基底エネルギーに関する数理解析
檀 裕也 Yuya DAN 松山大学
電磁気力によって相互作用する量子多体系の基底状態は、シュレーディンガー作用素に対するスペクトル計算から求めることができる。 そのような量子複雑系の基底エネルギーについて、粒子数に比例した負のエネルギーで下に有界でなければ、安定性が成り立たない。LiebとThirringは1976年、量子系の安定性に基礎を与える不等式を数学的に証明し、 ある予想について述べた。現時点では、その予想は肯定的にも否定的にも決着がついていないが、Dolbeault、LaptevおよびLossによって2008年に示された係数の精緻化が最善の成果であり、Lieb-Thirring予想の解決に向けて多くの研究者が証明の試みに取り組んでいる。 一方、2011年に全く異なるアプローチを提案したRuminの手法に沿ってSolovejらがLieb-Thirring予想の解決を目指している。 本研究は、Rumin-Solovejの手法を基盤としてLieb-Thirring不等式の精緻化およびLieb-Thirring予想の十分条件を提案するものである。
6. Momentum relation and classical limit in the future-not-included complex action theory
永尾 敬一 Keiichi NAGAO 茨城大学
Studying the time development of the expectation value in the future-not-included complex action theory, we point out that the momentum relation, which was derived via the Feynman path integral and was shown to be correct in the future-included theory in our previous papers, is not valid in the future-not-included theory. We provide the correct momentum relation in the future-not-included theory, and argue that the future-not-included classical theory is described by a certain real action. In addition, we provide another way to understand the time development of the future-not-included theory by utilizing the future-included theory. Furthermore, properly applying the method used in our previous paper to the future-not-included theory by introducing a formal Lagrangian, we derive the correct momentum relation in the future-not-included theory. This talk is based on the collaboration with Holger Bech Nielsen (Prog. Theor. Exp. Phys. (2013) 073A03).
7. Reinterpretations of an experiment on the backaction in a weak measurement
中村 康二 Kouji NAKAMURA 自然科学研究機構 国立天文台
Interpretations of an experiment on the backaction in a weak measurement in [Iinuma et al., New J. Phys. 13, 033041 (2011)] are revisited. We show two different but essentially equivalent interpretations for this experiment along the original scenario of weak measurements proposed by Aharonov, Albert, and Vaidman [Phys. Rev. Lett. 60, 1351 (1988)]. To do this, we introduce the notion of extended weak values, which is associated not only with the states of the system but also the state of the measuring device. We also evaluate fluctuations in this experiment, and found that an optimal measurement strength exists for a fixed polarization angle prepared as an initial state, at which fluctuations in measurement results vanish. The consistency of this evaluation with the experimental results is discussed.
8. Quantum Entanglement of Local Operators in Conformal Field Theories
野崎 雅弘 Masahiro NOZAKI 京都大学
We introduce a series of quantities which characterizes a given local operator in conformal field theories from the viewpoint of quantum entanglement. It is defined by the increased amount of (Renyi) entanglement entropy at late time for an excited state defined by acting the local operator on the vacuum. We consider a conformal field theory on an infinite space and take the subsystem in the definition of the entanglement entropy to be its half. We calculate these quantities for a free massless scalar field theory in 2, 4 and 6 dimensions. We find that these results are interpreted in terms of quantum entanglement of finite number states, including EPR states. They agree with a heuristic picture of propagations of entangled particles.
9. 弱値の操作的意味について
福田 教紀 Kazuki FUKUDA 総合研究大学院大学
Aharonovらにより提唱された弱値、弱測定は、量子力学の基礎的理解において有用な概念であると多くの物理学者に認識されている。 しかし、その弱値の物理的意味についての共通の見解は得られていない。本発表では測定の一般論の範疇で、操作的に有意義な要請から、弱値の実部を自然に得ようとする研究を紹介する。
10. Convergence Conditions of Mixed States and their von Neumann Entropy in Continuous Quantum Measurements
布田 徹 Toru FUDA 北海道大学
By carrying out appropriate continuous quantum measurements with a family of projection operators, a unitary channel can be approximated in an arbitrary precision in the trace norm sense. In particular, the quantum Zeno effect is described as an application. In the case of an infinite dimension, although the von Neumann entropy is not necessarily continuous, the difference of the entropies between the states, as mentioned above, can be arbitrarily made small under some conditions.
11. 量子フィードバック制御下でのゆらぎの定理
布能 謙 Ken FUNO 東京大学
ゆらぎの定理やJarzynski等式は平衡から離れたところでも成り立つ関係式であり、非平衡統計力学の分野で理論、実験の両方で多くの関心を集めてきた。 さらに、実験技術の進展により、熱ゆらぎによってゆらいでいる小さな系を測定とフィードバックによって制御することが可能になってきており、フィードバック制御を含めた場合になりたつ非平衡等式の研究が盛んになっている。 今回の発表では量子系にフィードバック制御を行った時になりたつゆらぎの定理を報告する。 得られた等式には測定によって獲得した情報量を表すInformation gainと呼ばれる量が現れ、量子測定に伴う測定の反作用の効果を含んでいることを説明する。
12. Hidden Supersymmetry in Fermion lattice systems
守屋 創 Hajime MORIYA 芝浦工業大学
隠れた超対称性を持つ非相対論的格子模型をC*代数の定式から研究した. 扱うのはいわゆる格子上の場の量子論では無く, 量子スピン系や格子フェルミオン模型である. (XXZ模型との関連もある.)
具体的には2003年アムステルダム大学のグループが, フェルミオンのみでボゾンが存在しない, 非相対論的で隠れた超対称性を持つ格子フェルミオン模型を提案した.  しかし古くは1976年, H.Nicolai氏は超対称性と量子スピン系を取り上げている.  我々のC*代数的定式は上記どちらの模型も無限格子系で(境界条件など課さず)再現することができる. さらに一般的に, 格子フェルミオン模型が隠れた超対称性を持つための十分条件を格子間局所相互作用から与える数学的な定理を得た. これはスピンがある場合にも適用できる.

コンファレンスの趣旨に添い, 以下の二つの物理的な側面に焦点をあてる.
(A)超対称性状態空間の凸構造, (B)超対称性ダイナミクスの(非)エルゴード性.

(A)超対称状態の空間, SUSY vacuaの集合, の構造を取り上げる. 上記の具体模型では超対称性状態が極めて縮退している. 並進対称性を破るvacuaも多数存在し, C*代数ではこうした状況で見通しが良い議論が可能である.またここから(B) 隠れた超対称性を持つダイナミクスの非エルゴード的な様相を導く.

近年孤立系の量子ダイナミクスの理論的, 実験的な研究が盛んである. 一方でC*代数では体積無限大の量子系のダイナミクスに関するいくつかの特徴づけと一般論が古くから 知られている. しかし具体例について非自明なものはほとんど知られておらず, 数理物理の手つかずの未解決問題(B.Simonらが提案)である. 今回はこうした量子ダイナミクスの問題に対して, 隠れた超対称性モデルから注意を与えたい.
13. 行列模型とランダム行列理論による蛋白質の解析
山中 雅則 Masanori YAMANAKA 日本大学
蛋白質の立体構造について静的な観点からは行列模型を用いて、動的な観点からはランダム行列理論を用いて解析を行った。 現在、PDB[1]にスタックされている蛋白質の立体構造は10万種類に届こうとしており、その詳細な分析が課題となっている。 本研究では、蛋白質の二次構造を行列模型のトポロジー展開におけるファインマン図と対応させることでトーラスの種数により分類した。 数万種類の蛋白質を擬ノットの既約表現へ既約分解し、既約表現の出現頻度を考察した[2]。種数は蛋白質の分子量に対して示量変数となっている、 既約表現には特徴的なスケールが存在することなどが分かった。超弦理論における開弦の世界面と蛋白質の二次構造を対応させ、 モジュ ライを考察したPennerらの分類[3]との対応関係を議論する。動的な構造解析として、溶媒を含む全原子分子動力学の時系列解析にランダム行列理論を適用した。 分子動力学の時系列データの解析には主成分分析がよく用いられる。その工程にランダム行列理論と、不純物による電子のアンダーソン局在の局在長に関する統計量を導入することにより、 局在モードの抽出を行った[4] 。近年、経済物理学における株価等の相関解析において、主成分分析にランダム行列理論を併用することで新たな知見が得られており[5]その手法の蛋白質への応用例となっている。
[1] PDB: Protein Data Bank: http://www.rcsb.org/pdb/
[2] Y.Miyazawa, S.Tanda, M.Yamanaka, preprint.
[3] R.C.Penner, et. al., Pure Appl. Math., 63, 1249 (2010).
[4] M.Yamanaka, JPSJ, 82, 083801 (2013).
[5] V. Plerou, et. al., Phys. Rev. E65, 066126 (2002).

(内容は発表者の都合で変更の可能性があります)