申し込み順、敬称略 | ||
1. | 量子測定における誤差論の構築 | |
森 雄一朗 | 東京大学/KEK | |
物理学に限らず、おおよそ科学的な実験において何らかの結論を導く上で「誤差」が重要であるが、この誤差の概念は量子論以前に確立されたものであり、その発想は多分に古典物理的である。しかし、量子論では測定に対する概念、観念に大幅な変更が加えられており、その結果として量子論に適合した誤差論が構築されてしかるべきであるが、様々な要因により、量子論における誤差の議論は古典的な誤差論の概念をすべて包含したものにはなっていない。そこで量子測定に古典的な誤差論を包含させる手法について検討し、一部の問題に対して我々の手法を適用して議論を行った。 | ||
2. | On the New Uncertainty Relation Derived Geometrically from Aharonov's Weak Value | |
渡辺 皆成 | 東京大学/KEK | |
Heisenberg(Robertson-Kennard型)の不確定性関係は観測量の分散の積の下限を定めるが、この下限に共分散を加えても不等式は成立し、これはSchrödingerの不確定性関係と呼ばれる。 2019年にLeeらは観測量空間の幾何学的考察から、この下限にさらに弱値を含む項を加えたより厳格な不等式が成立することを示した。 本ポスターでは、この弱値を含む不確定性関係とその最小不確定状態について述べる。 | ||
3. | Holographic entanglement entropy & massless wave front | |
辻村 潤 | 名古屋大学 | |
笠-高柳公式はCFTのエンタングルメントエントロピーをAdS/CFT対応を用いて簡単に計算する方法である. 笠-高柳公式は, CFTのエンタングルメントエントロピー正しく再現しない場合があり, それらが非自明な仮定による結果であることを指摘する. 我々は, その仮定の代わりに, 笠-高柳公式の波面としての描像を与える. | ||
4. | On the equivalence of approximate Gottesman-Kitaev-Preskill codes | |
松浦 孝弥 | 東京大学工学系研究科物理工学専攻 | |
The Gottesman-Kitaev-Preskill (GKP) quantum error correcting code attracts much attention in continuous variable (CV) quantum computation and CV quantum communication due to the simplicity of error correcting routines and the high tolerance against Gaussian errors. Since the GKP code state should be regarded as a limit of physically meaningful approximate ones, various approximations have been developed until today, but explicit relations among them are still unclear. In this paper, we rigorously prove the equivalence of these approximate GKP codes with an explicit correspondence of the parameters. We also propose a standard form of the approximate code states in the position representation, which enables us to derive closed-from expressions for the Wigner functions, the inner products, and the average photon numbers in terms of the theta functions. Our results serve as fundamental tools for further analyses of fault-tolerant quantum computation and channel coding using approximate GKP codes. | ||
5. | Non Commutative GGE | |
深井 康平 | 東京大学 | |
保存量がマクロなオーダーで存在する量子可積分系のユニタリ時間発展における定常状態を説明する分布として一般化ギブス分布(GGE)がある。これまでGGEは系の互いに可換な保存量のみを用いて構成されたが、今回互いに非可換な保存量を用いたGGEを構成し、具体的な模型(Free fermion)での数値計算で従来のGGEよりどの程度精度が改善するかを見てみる。また、保存量同士の積をも組み込んだGGEの構成についても触れる。 | ||
6. | 生成消滅演算子に基づく量子論理 | |
保科 宏樹 | 東京大学 | |
量子力学における論理として知られる量子論理について、フェルミオン的な生成消滅演算子を用いた定式化を試みる。 | ||
7. | A refinement of Bell's inequality versus quantum mechanics argument by algorithmic randomness | |
只木 孝太郎 | 中部大学 | |
The notion of probability plays a crucial role in quantum mechanics. It appears in quantum mechanics as the Born rule. In modern mathematics which describes quantum mechanics, however, probability theory means nothing other than measure theory, and therefore any operational characterization of the notion of probability is still missing in quantum mechanics. In our former work [K. Tadaki, arXiv:1804.10174], based on the toolkit of algorithmic randomness, we presented a refinement of the Born rule, called the principle of typicality, for specifying the property of results of measurements in an operational way. In this talk, we make an application of our framework to the argument of Bell's inequality versus quantum mechanics to refine it, in order to demonstrate how properly our framework works. On the one hand, we refine and reformulate the assumption of local realism to lead to Bell's inequality, in terms of our operational characterization of the notion of probability by algorithmic randomness [K. Tadaki, arXiv:1611.06201]. On the other hand, we refine and reformulate the corresponding argument of quantum mechanics to violate Bell's inequality, based on the principle of typicality. | ||
8. | Fine-grained quantum supremacy based on OV, 3-SUM and APSP | |
早川 龍 | 京都大学 | |
従来の量子スプレマシーの理論では「多項式階層が崩壊しない」という仮定に基づいて多項式時間で古典シミュレートできない量子計算の存在が示されていた。しかし、準指数時間あるいは弱い指数時間かけてよいならば古典でシミュレートできるという可能性を否定することはできていなかった。今回の発表では、指数時間かけても古典計算によってシミュレートできないような量子計算の存在を、古典の fine-grained complexityの分野でよく研究された、Orthogonal Vectors (OV)、3-SUM、All-Pairs Shortest Paths (APSP) という3つの問題に関する計算困難性の仮定に基づいて示す。 | ||
9. | 事前・事後選択系における物理量の揺らぎの定式化とその実験的検証 | |
阿部 夏来 | 北海道大学 | |
事前・事後選択されたシステムにおける物理量Aに関する情報は, 弱測定を用いることでAについての弱値という形で取得が可能である. 弱値はAの固有値とその固有状態に対応する弱確率から成る, 条件付き期待値のような概念として理解することができる. 事前選択のみの系では, Aの固有値とその固有状態に対応する確率をもとにして, 期待値や分散、歪度、尖度といった統計学的指標が定義されているが, 一方で事前・事後選択系では期待値に対応する弱値のみが注目されている. 本研究では, 事前・事後選択系における条件付き分散として新たに「弱分散」を定式化し, これが事前・事後選択系における物理量の揺らぎを表す特徴量として実際の物理系に現れる量であることを理論的に明らかにした. さらに光学実験により, 弱測定プローブのシフト量に弱値が現れると同時に, プローブの分散変化量に弱分散が現れることを実証した. | ||
10. | 量子状態間における相対関係の定式化とその直観的表現の構築 | |
斎藤 理人 | 北海道大学 | |
2状態では内積, 3状態では内積及び幾何学的位相が状態間の関係性を示すものとして知られているが, 4状態以上の状態が存在した場合については, それらの相対関係を指定するためにどのようなパラメータを指定すれば必要十分なのかは知られていない. また, 状態が3状態あるとき, その相対関係が古典的直感には無い幾何学的位相の自由度を持つにもかかわらず, 3状態の相対関係を直観的に表現する手法が存在しない. 3状態を表現する手法自体は存在するものの, 内積の大きさと幾何学的位相の間に成り立つ不等式を反映した表現にはなっていない. 本発表では, 測定や識別可能性を決定づけるものとして複数状態の相対関係を定義し, 状態数の二乗に比例したパラメータを指定すれば必要十分であることを示す. また, 古典的に理解しがたい3状態間の相対関係の性質, 特に幾何学的位相の振る舞いを定量的にを理解する方法として, Bloch球を3状態の場合に拡張した手法を提案する. | ||
11. | ナノスケールの散乱体に繋がれた複数電極間のベル相関の形成と観測 | |
阪野 塁 | 東京大学物性研究所 | |
量子ドットに複数の電極が繋がれ、電極間にバイアス電圧が印加され電流が流れている状態を考える。このとき、電極間に励起された量子エンタングルメント状態を、電流ゆらぎに対するベル相関を用いで調べる[1]。この系では、電子対、正孔対、電子正孔対によるスピンのベル相関対が電流中に形成されることを議論する。さらに、バイアス電圧の印加の仕方や、散乱体(量子ドット)の透過係数の大きさを調整することで、ベル相関対の形成がポアソン過程となり、電流ゆらぎの相関によって観測可能であることを示す。 [1] N. M. Chtchelkatchev, G. Blatter, G. B. Lesovik, and T. Martin, Phys. Rev. B 66, 161320(R) (2002). | ||
12. | 量子場系のボルツマンエントロピー | |
吉田 恭 | 筑波大学 | |
統計力学のアンサンブル描像において、古典論ではギブスエントロピー、量子論ではフォン・ノイマンエントロピーのように、エントロピーは状態のアンサンブル(量子論では混合状態)に対して定義される。それに対して、個々の(純粋)状態に対して定義されるエントロピーは、ボルツマンエントロピーと呼ばれる。本研究では、場を波数空間でシフトする演算子を援用して、量子場の系にボルツマンエントロピーを構築する方法を示す。構築されたボルツマンエントロピーは孤立系の熱緩和など非平衡過程を特徴付けることが期待される。 | ||
13. | 量子マルコフ過程および非マルコフ過程のもとでの温度とエントロピー生成率 | |
青木 隆明 | 産業技術総合研究所、東京大学 | |
近年、非平衡状態の局所的な励起を特徴づけるために非平衡局所温度を定義しようとする研究や、開放量子系の非マルコフ性を特徴づけるためにエントロピー生成率を定義しようとする研究が盛んである。これら二つの問題に同時に取り組むべく、我々は単一モード・ガウシアン状態の温度とエントロピー生成率を同時に定義した。解析した系は多数の量子調和振動子(環境)と結合した一個の量子調和振動子(着目系)からなる。全系をガウシアン状態に制限することで、着目系は単一モード・ガウシアン状態となり、その温度とエントロピー生成率を解析的な表式で定義できた。着目系のダイナミクスがマルコフ的な場合と非マルコフ的な場合とで温度とエントロピー生成率の振る舞いにどのような違いが生じるかを議論する。 | ||
14. | 任意のCPTP写像に対するエントロピー生成とゆらぎの定理 | |
上村 俊介 | 筑波大学 | |
物理系が量子力学に従う場合を想定し、また物理過程として最も一般的なCPTP写像を考えると、エントロピー生成と逆過程を適切に定義することで、古典力学ですでに確立された「ゆらぎの定理」に対応する関係式を任意のCPTP写像に対しても導出することができる。またこの場合、このエントロピー生成のアンサンブル平均で表現される熱力学第二法則は、「CPTP写像下における量子相対エントロピーの単調性」に対応する。 | ||
15. | ダイアグラム表現を用いた密度行列, プロセス行列, 測定行列の直接測定 | |
高橋 雅也 | 北海道大学 | |
量子系は状態, プロセス, 測定の3つの要素によって特徴づけられ, これらを指定することによってその量子系が示す振舞いを正確に予測することができる. そしてこれらの要素はそれぞれ密度演算子, クラウス演算子によるクラウス表現, POVMによって数学的に記述される. これらの演算子の測定手法としては測定対象の演算子の全体を推定する量子トモグラフィが一般的であるが, それに対して, 各行列成分を個別に求める直接測定と呼ばれる手法もある. これまでの直接測定はvon Neumann相互作用を用いた型の測定系を各測定対象ごとに考える必要があり測定系の導出が複雑化していた. そこで統一的な手法により直接測定系を導出する方法として我々は以前, 直接測定の測定系を直感的に表すことができる「ダイアグラム表現」を提案した. 本研究では前述した量子系を特徴づける3つの演算子をダイアグラム表現により導出した測定系を用いて実験的に測定できることを実証することを目的としており, 本発表ではその進捗について示す. | ||
16. | クラスター状態に対する外部磁場と温度の影響 | |
秋本 一輝 | 中央大学 | |
測定型量子計算では、クラスター状態と呼ばれる特殊な量子状態を用意し、その量子状態に対し観測を繰り返すことにより任意の計算を行う。このクラスター状態はクラスターハミルトニアンの基底状態として得られる。測定型量子計算の性能は、実際に得られたリソース状態と理想的なリソース状態のフィデリティを計算することで見積もることが出来る。先行研究ではフィデリティを調べることによって熱によるノイズの影響の解析がなされているが、クラスターハミルトニアンに生じたノイズによる影響は調べられていない。本研究では、ノイズとして外部磁場を印加したクラスターハミルトニアンを用いて、測定型量子計算のゲートフィデリティをシミュレーションした。また、それを有限温度へ拡張した場合についても報告する。 | ||
17. | 一般確率論における状態準備の不確定性と測定の不確定性との間の関係 | |
高倉 龍 | 京都大学 | |
量子論の大きな特徴の一つとして不確定性関係の存在がある。不確定性関係には状態準備についての不確定性関係と測定について不確定性関係の2種類が存在していることが知られており,適当な尺度の下でこれら二つの不確定性関係の間に対応が付くことが量子論においては示されている。本発表では操作的に許される最も一般的な理論である一般確率論においても2つの不確定性関係を考え,状態空間にある種の対称性が課された理論において2つの不確定性関係に量子論と同様の関係が成り立つことについて説明する。 | ||
18. | Statistical Evaluation of Qubit Cross-correlation via Random Number Generation | |
田村 賢太郎 | 慶應義塾大学 | |
In theory, quantum computers should serve as ideal random number generators. This is because the measurement results of quantum states are probabilistic. However, current quantum computers are Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer (NISQ) devices and are prone to errors and noise. In this study, we analyzed the qubits inside IBM’s cloud quantum computers by generating random numbers with its qubits and statistically examining the resulting sequences. As a result, we found bias in some qubits and correlation in several qubit pairs. | ||
19. | 格子上の量子系における局所的撃力の伝播 | |
吉永 敦紀 | 東京大学 | |
格子上のスピン系は近年冷却原子系でも実現され、孤立量子系の熱平衡化や情報の伝搬ダイナミクスに関して多くの研究がなされている。本研究では、可積分系である1次元 XY 模型において基底状態に局所的なユニタリ操作を加え、その局所的変動の伝搬ダイナミクスを様々なモデルパラメタで具体的に厳密に計算した。この場合、変動を伝える最も速い波面は最大群速度で広がるが、その強度は遠方で距離に対してべき的に減衰することを、指数も含めて漸近解析と数値計算によって示した。また、群速度に複数の極値が存在する場合には、対応する異なる群速度で伝搬する複数の波束が現れることを確認した。 | ||
20. | クエンチ感受率と熱力学的感受率の関係 | |
千葉 侑哉 | 東京大学 | |
近年、冷却原子系により、様々な量子多体系のモデルを模倣し、実現することができるようになってきた。さらにこの系は、十分に孤立した量子系とみなすことができ、クエンチを行った後の時間発展が広く調べられている。また理論的にも、このときの熱平衡化の有無が、固有状態熱化仮説(ETH)などによって説明されてきた。本研究では、このようなクエンチ実験に対する感受率に焦点を当て、それが熱力学的感受率と一致するかという問題を調べた。実は熱力学的感受率には、等温感受率と断熱感受率の2種類が知られており、この問題ではそのどちらと比較すべきかという点すら明らかではない。我々は、ETHに似た条件の下で、クエンチ感受率の波数k依存性を調べ、そのk=0成分とk->0極限が異なる値をとること、すなわちクエンチ感受率はk=0で不連続であることを示した。さらに、それぞれの値が、断熱感受率と等温感受率を与えることを示した。また、このような特異的な振舞を、上記の条件がみたされるような系で実験的に確認すると、どのような結果が得られるか、また条件がみたされないような系で実験すると、この振舞がどう破れるのか、という点を数値計算で実証した。 | ||
21. | 統計力学アンサンブルの拡張と応用 | |
米田 靖史 | 東京大学 | |
新しいアンサンブルの一群を導入し、平衡統計力学の定式化を行った。. | ||
22. | On the convergence of two-mode squeezed states | |
並木 亮 | 学習院大学 | |
A two-mode squeezed state defined on a quantum optical two-mode system is often considered to play the role of a maximally entangled state. Its strong-squeezing limit is thought to describe the so-called EPR state which has perfect simultaneous correlation and anti-correlation on the position and momentum of two distant particles. We investigate the convergence property of a sequence of two-mode squeezed states in the limit of strong squeezing and discuss its application in quantum information theory. | ||
23. | A quantum-classical algorithm for graph embedding | |
小林 俊平 | 東京大学大学院 情報理工学系研究科 創造情報学専攻 | |
Quantum walks and graph representation learnings a.k.a. graph embeddings are two hot topics in the respective fields of study. We employ a quantum walk to create a corpus by traversing a graph so that the corpus will be fed into a word vectorization algorithm to produce a graph node representation. | ||
24. | Weak value amplification in cold atomic system as Maxwell's demon | |
上田 大輝 | 総合研究大学院大学 | |
We investigate a relation between the weak value amplification and Maxwell’s demon in the cold atomic system. In this paper, we propose a thought experiment consisting of cold atoms, in which Maxwell’s demon appears and a difference in the von Neumann entropy between the initial and final system becomes negative. Our study indicates that the difference in the von Neumann entropy is controlled by the weak value of the atom’s energy level, and the weak value amplification corresponds to the decrease of the von Neumann entropy. In addition, we show that a temperature of the atomic system is amplified by the weak value amplification. |