前回の議事録案が、Kの部分のE391aを持って行った場合の感度についての記述、ハドロン部分の K1.8、K1.1 とRHICによる進展に関する記述、また、全体に関する議論の所のJHFの在り方についての方針、について加筆訂正の後承認された。最終版については本委員会のページ参照のこと。
物理的意義:
1. 反陽子原子の超精密分校によるCPTの精密検証
すでに反水素原子の生成に成功(〜10^{5-6}個)。将来的には、CPT を10^{-18}の精度で検証可能。
2. 反陽子による原子核研究
反陽子は、表面で対消滅するため、特に原子核の表面のプローブとして有効。CERN の LEAR における反陽子による中性子分布の測定は、DC ビームがないため中断。
3. Exotic Meson Spectroscopy (特に scalar glueball 探索)
4. 反陽子トラップ技術
反水素生成に必須であるばかりでなく、医学利用を初めとするさまざまな応用がある。
実験:
AA と AD の組み合わせにより超低速反陽子ビームを生成する。また、超低速不安定核ビームの生成をする可能性もある。これらに配慮して施設の設計を考慮する必要がある。
海外との関係:
CERN は AD の運転続行について前向き。GSI については、2003 年春には予算が確定する。
評価:
●ビーム強度と DC が主軸。これが本質的な物理がたくさんあるならば緊急度は高い。
●AA、AD の箱だけを用意すれば良いのか、さらなる発展を考えるのかは議論を要する。
報告および、叩き台の内容に関して以下のような質議があった。
Q:ユーザーが300人いるというのは?
A:全て。GSI が通れば、300人の内200人がいなくなる。
Q:工学系には人はいないのか?
A:実験屋が工学屋をかねているようなところがある。
Q:基礎研究へのインパクトが見えにくいが?
A:特長は DC、それで X-ray が測れる。
Q:GSI が行くとどうなるか?
A:3は厳しくなる。1、2は CERN 次第。
Q:1 を進めるのに、CERN のビーム強度は10年後も十分と言えるか?
A:上流の整備をする可能性はある。
Q:反水素以外のものは?
A:可能性はある。
C:あまり意味がないのでは?
C:重力のテストは重要。
C:理論的には考えにくい。
Q:GSI の予算規模は?見通しは?
A:600Mユーロ。噂では良い所まで行っているらしい。
C:German Science Council の答申では、優先度2(TESLA と同じ)に入った。これを喜ぶ人と悲観的な人がいる。
Q:LHC の予算面での影響は?
A:LHC 以外の小規模施設のサポートは LHC とは無関係に続く。ただし、2005 年に DG が代わるので、その後については分からない。LHC のための入射器強化は、νを含めていろいろな所を潤わせることになる。
C:LHC は人員不足に苦しんでいる。危機感は高い。
C:それは、JHF にとっては良いことかもしれない。
Q:取り出し口の施設予定地の確保については?
A:忘れないようにしてもらう。
C:PRISM の後ろにどうつないでいくかが問題。
C:この tension では忘れられてしまう。
Q:CPT の feasibility が、10^{-18} まであるのか?
A:現在、10^{-14}までは行っている。
C:string scale が低い可能性もあり、10^{-18}まで行かなければ反陽子の意義が無くなるというものでもない。
物理的意義:
1. QCD 真空
2. 構造関数
3. 高密度クォーク物質
実験:
早くとも2期。
1. 中間子の質量変化 --> カイラル対称性の自発的破れとハドロン質量生成機構の解明。
2. 50GeV ps --> ドレル・ヤン。
3. 核多重破砕。
4. 高エネルギー重イオンビームによるストレンジ原子核物理(ハイパー核の部分へ移動)。
5. ハドロン生成における原子核の流体的振る舞い(重イオンビームが必要)。
6. 偏極ビーム、偏極標的実験。
海外との関係:
GSI とは競合。
評価:
高強度ビームによる、統計の稼ぎにくい high x の構造関数の測定は、ubar/dbar 比の x 依存性の問題などにからみ、重要。また、Fermilab
にやりたい人がいる。2008 年あたりを目処に実験を開始できることが望ましい。
2 を軸としてプログラム再編を行い、より包括的な実験計画として進めるべき。
報告および、叩き台の内容に関して以下のような質議があった。
C:重イオンを primary beam として回そうとするならば、5 では動機としては弱い。
Q:4 と 5 は GSI と競合するのではないか?
A:競合する。
C:重イオンは分けた方が良い。
C:多くの重イオンの実験は、陽子ビームでもやる。
Q:時期的には重イオンはかなり後だから、phase でわけられるのではないか?
A:ありうるが、やっている人が同じだからいっしょにしておきたい。
C:結論の所で、”1、2、5は ....”とあるのを "1、2”とし、5は最後の重イオンの所に持っていくべき。
反陽子、ハドロンの報告に続き、まとめ(Executive Summary)の部分、星取り表の話に移る。必ずしも時系列でなく、また、全ての議論を網羅したものでもないが、おおよそ、次のような議論がなされた。
星の数について:
Q:構造関数だけで★★か?
A:合わせ技で★★。
Q:星1つのものを2つ集めたら星2つなのか、星1つのものはいくら集めても星1つなのか?
A:星1つが3〜4個で星2つになるようなもの。
意義についての議論(その定義も含めて):
C:discovery potential。
C:(discovery potential) ×(その分野の address する問題の重要度)。
C:★★★はノーベル賞。
C:ノーベル賞は星4つ。
C:νとμが同じなのはおかしい。
C:μは末広がり。
C:νの意義は大きい。
C:反陽子が厄介なのは、素・核が混じっていること。
C:ν、K、μとハドロン、ハイパー核、反陽子に分けて、素・核として議論してはどうか?
C:反陽子の意義は、応用面が重要。
C:それならば、素・核研究計画委員会としては議論しなくて良いのでは?
C:それでは狭すぎる。
C:μのステージングについては、6T、MECO と同程度の感度で出発(2007‾2008年開始)することは考えられる。
C:μが評価できる点は、感度が100倍であること。
C:そうは言っても、ステージングのシナリオがないと箱もできない恐れがある。
全体の結論部分について:
C:まとめの最後、全体の結論の部分は
といった感じか。
C:本当に問題なのは、μのホールか、カウンターホール拡張と2本めのビームライン建設のいずれをとるかという問題。
C:K ではカウンターホール拡張はいらないのではないか?B-line は必要だが〜15億。
C:この議論はやらない方が良い。
μに関して、そのステージングの是非に関してしばし紛糾。μは JHF で早期に物理の成果を出せるように強力に R&D を推進するということで合意。
個別の結論(全体の結論の理由付け)部分について叩き台(複数案あり)に基づいた議論:
C:K については、日笠案で良い。
Q:A、B については実際の所はどうなのか?
A:A の可能性は残す方向に進んでいる。
C:νについては 日笠案は守りの姿勢。
C:山中案の方が良い。それをもとに書き直す。
C:μについては、個別の結論部分でその物理的意義(LFV)をきっちり書くこと。
ハドロン、 反陽子、ストレンジネスについては、延與、櫻井、田村の各委員の叩き台を基に議論した結果、以下のようにまとまった。
● ハドロン物理分野で提案されている実験は JHF の高輝度を生かした固有の物理が展開できる。それらを可能とする多目的ビームライン、測定器の建設を推進すべきである。
●反陽子施設での実験プログラムは海外研究施設の動向によるところが大きい。反陽子を用いた物理では日本の研究者の実績が極めて高く、JHF での発展も期待できる。JHF
の大強度直流ビームを生かした戦略を練り上げることが望まれる。
●ストレンジネス核物理は、日本がリードしている実績のある原子核の分野であり、JHF では早期より着実な成果が期待できる。提案されている種々の実験を、初期より継続的に進めるとともに、装置や2次ビームラインの新設については個々の実験の間の優先度を設定して進める必要がある。
結論について、ある程度まとまったところで、再び星取り表の議論へもどった。まず、山中試案の星取り表の項目の定義についての議論があった。
Q:意義とは?
A:物理的意義。
Q:緊急度とは?
A:国際競争。
Q:国際的貢献度とは?
A:これがあるとどれくらいの人が恩恵を受けるか。JHF で実現することにより、世界の中心として、この分野を発展させることができる。
C:独自性として、○ のみにする。
続いて、星の個数に関してかなり激しい議論が戦わされた。最終的には星付けに関しては委員長一任となった。
タイムラインについて:
山中試案をもとに議論した。
C:同じ色にすべき。
C:2期の終わりで切る。
次回までの宿題:
次回には、Executive Summary 部の完成を目指す。